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信じられなかった。いくら、『特別製』のチャイナのおかげで準備ができていたからといって、ここまで同性相手に熱く感じてしまうなんて。生まれてこの方、気が強い方だったせいか冗談半分で『お姉様』なんて言われた事もあったけど、世間一般でいうノーマル以上の感情を抱いた事は一度もなかったはずだ。なのに今、目の前の美しい女性が愛おしくて、欲しくて、仕方ない自分がいる。一緒にベッドへ倒れ込んだまま、お互いの唇を重ね、舌を絡め、執拗に貪りあう自分がいる。チャイナの蔓草も、どんどん肌へ食い込んでくるかのようだ。
(狩谷さん……なんて艶めかしい絡め方なの……ああっ……このままじゃ……もうすぐ……あああーーーっ!!)
「……んっ……んんっ……んんんーっ!!」
意識が、真っ白に弾けて飛んだ。先に逝ってしまったのは、あたしの方らしい。
狩谷さんは、なおも艶めかしく、それでいて切なそうな表情で、あたしの唇と舌を一心不乱に貪ってくる。そんな彼女を見ていると一刻も早く満足させたくて、余韻冷めやらぬうちにより一層舌を絡め、唾液を啜り合う。
「……んんっ……んむっ……ちゅぱ……ちゅぷ……んぷっ……」
「……んっ……んんっ……んんんーっ!!」
狩谷さんが昇り詰めるまでに、ほとんど時間を要さなかった。
(……そ……そうだ……彼女にだったら……見せても……いいかも……)
絶頂を迎え痙攣する狩谷さんを見つめながら、あたしは思った。お互いの唇を離すと、その間で唾液が糸を引く。ほとんど、反射的に唾を飲み込むあたし。狩谷さんの方は、まだ正気に戻っていないのだろう。形の良い唇から零れた唾液を拭う事もできず、肩で息をするのが精一杯のようだ。ふふっ、切れ者の女秘書さんも、こんな可愛い表情ができるのね。
「……狩谷さん……大丈夫?……」
意識が飛んでしまっている狩谷さんへ声をかけながら、再び身体を絡め、介抱するように指でやわらかく刺激してあげる。
「ん、んん……あ、あれ……ここは……」
意識を取り戻す狩谷さん。でも、まだ朦朧としているみたいだ。すごい無防備で、何かいたずらしたくなる。さっきの彼女から見たあたしも、こんな感じだったのかな。
「何言ってるの、あたしの部屋じゃない?」
語りかけながら、狩谷さんの身体へ刺激を与えるのをやめない。こんなにも狂おしくなるくらい同性との悦楽を求める自分が、どうしようもなくあさましく、はしたない獣のように思える。でも、この悦びが捨てがたくなっている。ご主人様が与えてくれる悦びも何者に替えられないが、それとはまた別の感情が、あたしの胸に湧き上がっていた。
「あ……そ、そうだったわね……やんっ……」
ある程度正気を取り戻したらしい狩谷さんの熱を帯びた身体が、あたしの手に震えを伝えてくる。きっと、同じ悦びを感じてくれているはずだ。だから、もっと二人で快楽を分かち合いたい。お互い相手がいるけど、その背徳感が、かえって官能の炎を煽り立てるのだろうか。チャイナからの刺激だけで、この昂ぶる気持ちは説明できない。
「……ねえ……まだ……夜は長いんでしょう?」
そう。この炎を鎮めずには、とても眠れそうにない。だが、夜をともにするなら、あたしの首にかけられたもう一つの秘密も打ち明けるべきだろう。打ち明けた瞬間、彼女はどういう表情をするだろう。怖くて、口が強張る。だけど、最後にはきっと分かってしまう。だったら、今のうちに話しておいた方がいい。彼女に、まだ多少でも判断する余裕があるうちに。
「あぁん……そ、そうよ……んっ、ま……まだまだ……」
そんな嬉しい事を悶えながら言ってくれる狩谷さんの態度で、あたしの気持ちも固まった。
「……でね……一晩過ごすから……あなたに見て欲しいものがあるの……」
狩谷さんの身体から離れ、ゆっくりと起き上がる。
「あぁん……」
離れた瞬間、どこか抗議じみた喘ぎが彼女の唇から漏れる。しかし、それを気にする余裕が、あたしにはもう残っていなかった。
(――とうとう言っちゃった――)
恥ずかしさでカッ、と顔から火が出そうになるけど、もう後戻りはできない。
「よく見ていてね……」
ぼんやりとした瞳で見上げる狩谷さんの前で、あたしは、チャイナを留めるボタンへ手をかけた。これだけ身体が熱くなっていれば、着ていようといまいと大差はない。
突然のあたしの行動に、狩谷さんが戸惑いの色を浮かべている。逆の立場だったら、あたしだって戸惑っていただろう。でも、あたしは手を止める事なく、ボタンを全て外した。それから一息吸い、ゆっくりとチャイナを脱ぐ。静かな部屋のせいか、衣擦れの音が妙によく響いた気がする。
「え……椎名……さん?」
狩谷さんが、目を丸くしたまま固まった。当然だろう。彼女の目の前に現れたのは、下着を一切身に着けず、代わりに黒革の首輪のみを嵌めた女の裸体なのだから。
驚きのあまり言葉の出ない狩谷さんへ、全てを露わにしたあたしは、羞恥とそれを上回る快感に震えながら言葉を紡ぐ。
「……これはね……私が、ある人物の所有物(もの)である証なの……」
その証を、震える指でなぞってみせる。首輪に着けられたプレートの冷たい感触。そこには、『YUKO SINA』とアルファベットであたしの名前が掘られていた。あたしが、椎名 優子という人間の女が、イヤらしい悦楽と引き替えに人間としてのプライドを投げ捨て、首輪を嵌められて飼われるあさましくもはしたない牝犬である事を示す何よりの証として。
「所有物(もの)?」
狩谷さんが、まだ腑に落ちないといった感じの表情で尋ねてくる。まあ、ノーマルと言い難いし、普通はこういう反応なんだろう。やっぱり、あたし変態なんだ。だから、自分の牝をこんなに熱く湿らせている。
「今脱いだチャイナもそうだけどね」
そう。この首輪も、ホワイトデーの夜にあいつから贈られた物。本格的な代物で、よくチャイナの襟に隠れたと思う。
「でも……チャイナと違ってこれは鍵をかけられていて、私が勝手に外す事はできないの……」
鍵を持っているのは、もちろんあのご主人様。
自分の語っている事に思わず感じてしまい、牝の茂みがまた濡れた。さっき逝った事もあって、腿の辺りがベトベトしている。
「……はあ……ああっ……あたしはね……身も心もある人物に服従を誓った牝奴隷……」
せめて笑顔で話そうとしているつもりだけど、ダメだ。悦楽に溺れて、自分がどんな表情をしているか確かめる余裕がない。
「……そんな立場に……こうやって……はしたなく感じている……あふうっ……」
ただ、こうやって淫蕩な告白を続けるので精一杯。狩谷さんが、ようやく状況を理解し、何か気づいたような表情へと変わった。しかし、それを気にかけてもいられない。彼女にどう思われようと、告白を中断するわけにはいかないのだ。
「……ねえ……狩谷さん……あなたは……それでも……あたしと一晩過ごせる?」
覚悟を決めたつもりなのに、心のどこかで恐怖を感じている。
「こんな事、他人に絶対言えないけど……あなたには言っておかないといけないと……思ったから……」
狩谷さんだから語れるのだ、と思った。でも、この告白を終えた時に、彼女がどんな目で見るのだろうと怖がっている自分がいる。それを今、改めて思い知らされた。
「……不快な気分にさせたら……ごめんなさい……」
狩谷さんの顔色を窺うように告白を終えた途端、彼女は起きあがり、あたしの唇を再び奪った。
「ん!?……んんっ……んむぅ……!!」
突然の狩谷さんの行動に驚きながら、あたしは受け入れ、お互いの唇を貪る。先ほど以上に熱の籠もった彼女の愛撫に、あたしの牝は一層しとどに濡れぼそった。
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