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竜守の話
Simon作
(4)
来た道を逆に辿って、今度こそ竜堂の 竜の住む所へ
大きくて気をつけないと脱げそうになる靴
なのに転んだりしないですむのは、ゾフィーが速さを加減してくれてるから
本当に、この人はただの竜騎士なんだろうか
なんだか……
「ミンナ 君は竜について何を知っている?」
前を向いたまま、いきなりそんなことを
何て答えよう……何も知りません それだと嘘になる ゾフィーに嘘はつきたくない
だけど、指先に残る暖かさ 闇の中に浮かび上がる銀は、あれは私だけの秘密だから
結局何も言えなくて
「聞き方が悪かったかな……多分君が見たことがあるのは、成竜だけだろう あれは一つの完成形だ」
人よりも
口にしなかったけれど、ゾフィーはそう思ってる 多分
私もそれを信じる 知っているから あのときの竜母の瞳
優しくて静かで……底知れない
今思い出しても震えそうになる 怖いんじゃない 怖いけど、もっと嬉しいあれだけ巨きな竜母が、私を私として見てくれた
「だが、幼竜ときたら……これがいつかはああなるとは、絶対に信じられん」
え?
信じられないって でも
「ああ 確かに成長していく様を実際に見ているさ その都度思わされるんだ これは奇跡が大盤振る舞いされてるんだって」
握りこぶしを震わせながら
……どうしよう 本気でそう言ってるように聞こえちゃう
「ですがゾフィー……」
何て言えばいいんだろう そんなことないなんてとても言えないけど あ そう
「あ……ありがとうございます」
幼竜については、多分ゾフィーの言うのは本当なんだと思う
でもこんな風に話してくれたお陰で、すごく 馴染めた気がする
だから、ほら
私が的外れなこと言ったのに、ゾフィーも ふむ て頷いてる
足が軽くなった
「だがな、やはり心配だぞ やつらが馬鹿をしでかしたとき、ぶん殴ってでも言うことを聞かせるのが我々の使命だ ミンナが殴ったところで、あの馬鹿どもは逆に撫でてもらった 褒められたと勘違いしかねん――」
「鍛えますからっ!」
思わず大きな声を出しちゃった ゾフィーが ハ と鼻で笑う
「そりゃ頼もしい!」
ああ 凄い
心が弾んでる こんなに簡単に私のこと
ここに来るまで、笑えるなんて思わなかった
こんな風に笑えるなんて、自分でも知らなかった
ありがとうございます
……分かってる きっと私は沢山の人に嫌われてる でもあなたのお陰で
あの子に、笑顔で逢える
「ここ?……でもここは」
竜母の部屋じゃ 銀竜はまだここにいるの?
「ここは竜母の間だ ここでお前と会わせたいと言われたのでな」
言われた 誰にだろう でもそんなことよりも この扉の向こうに……いる
とくとくとく
胸を押さえて 息を飲む
大丈夫です 行きます
頷いた私に、ゾフィーが扉を開けてくれた
「……ぁ」
すごい ぎんいろの炎だ
若くて強い 竜の形をした炎
「あれが、お前の竜だ」
囁くようなゾフィーの声 目が離せない私は、小さく頷くのがやっと
本当に、成竜とは全然違う
細くてしなやかで、荒々しい 私のことをじっと
そ と、ゾフィーが背中を押してくれた
凍ってた足が、それで動いた よろけながら
馬よりも少し小さいかもしれない だけど存在感が 瞳が全然違う
フルルル
なぐっていうことを聞かす? 無理ですそんなの
私食べられちゃいます ぱくって
グバァ
ほら 鋭い牙 触れただけで指が切れそう
銀竜でも口の中は人とそんなに色は違わないんだ
息 生臭いかもって思ってたけど、そんなことなかった
す と顔を寄せてきて
がぶり
「……え?」
右の肩 ぱくりって……あれ? 胸の上までまるごと 竜の口の中
ずぶ 熱
「…………っ!」
ゾフィーの声 でも耳が聞こえません うわぁんって響いてて
背中から胸まで いっぱい熱いんですけど
どぶっ
きゃっ! 一気に濡れちゃった 竜のよだれ? でも 私の目がおかしくなったのかな 真っ赤に見え……
……ごり
あ 肩の骨に固いものが ぐぐ びきごき 簡単に割れちゃっ
どくどくどく 心臓がうるさい
なんだか……寒く……暗い
ちょっとだけ横を向いたら、銀竜と目が合った
右手 は、全然動かないから、左手で
怒られないようにそっと竜の喉に……ああ、やっぱりあったかいなぁ ごくり ごくって動いてる 私の血 飲んでるの? おいしい?
……りゅうもりって……りゅうのえさだったのかなぁ……
うん 悪くないかも
足がもう力が入らないんだけど、竜の歯が支えてくれてるみたい……
どく どく
……きれいな瞳だなぁ……
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